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徒然覚書

学説の要約、個人的なメモなど。

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3年次発表(夏)の手順

日本神話の形成

初めに
幼少から宇宙に興味があり、宇宙や天体の様子が神話と結びつき、
さらにそれが王権神話に繋がっている事に興味を持った。
また、大学の専攻授業で世界各地で共通する話型モチーフにも興味を持つようになり
日本の太陽神はどういった地域と類似しているのかを卒論の漠然とした方針に据えた。
2年次は地域に拘っていたが、3年では経路に着目し、限定的に絞込みを行う。
いつどのような文化によって運ばれ、いかなる経路でわが国にまで伝播したのか?
今回はこの題について追及する。

キーワード(王権神話・三機能形態)

一.日本への文化流入
日本は縄文から古墳まで、時代ごとに異なる性質を持つ文化で形成されている。
→ 島国の南北に長い地形が様々な文化の人々が流入してくる作用をもたらした。

縄文文化
・母系的・秘密結社的・芋栽培=狩猟民文化
 縄文中期はじめ頃日本に流入メラネシア原住民の文化と一致。
 乳棒状石斧・棍棒用石環・石皿・土器形態と文様・土偶・土面・集団構造
 男性秘密結社の祭り(ナマハゲ)・タロ芋の一種であるサトイモを祭事の折の食物にする

・母系的・陸稲栽培=狩猟民文化
 縄文末期に日本に流入。アウストロジア語系の民族の文化と一致。
 狩猟生活とともに山地丘陵の斜面の焼畑において陸稲を栽培した
 太陽神アマテラスの崇拝・家族的・村落共同的シャーマニズム・司祭的女性支配者

弥生文化
・父系的・「ハラ」氏族的・畑作=狩猟民文化
 弥生初期に満州、朝鮮方面からツングース系の種族によって日本に流入
 アルタイ語系言語を最初に日本に持ち込んだ
粟や黍を焼畑で栽培しながらも狩猟も行った(櫛目文土器・穀物の穂摘み用半月系石器)

・男性的・年齢階梯制的・水稲栽培=漁撈民文化
 紀元前4.5世紀頃、揚子江の夏口地方よりも南の沿岸地域から呉・越両国滅亡に伴う民族移動の余波として日本に渡来した。弥生文化における南方的と言われる諸要素を日本列島にもたらした。
 アウストロネシア系の種族文化。(水稲耕作・進んだ漁撈技術・板張り船)



古墳文化
・父権的・「ウジ」氏族的・支配者文化
 支配者王侯文化・国家的支配体制を持ち込んだ天皇氏族を中心とする部族の文化。
 アウストロネシア系の文化と同系同質の種族が、西から来たアルタイ系騎馬遊牧民によって征服され国家に組織されることによって、満州南部に置いて成立したが1世紀前から南下し始め朝鮮半島南部に暫く留まり3~4世紀頃に日本列島に渡来。
 「ウジ」父系的氏族、軍隊体制、王朝制、氏族長会議、奴隷制、氏族職階制、各種の職業集団、鍛冶職集団などを所有。ユーラシア・ステップ地域の騎馬遊牧民の文化と本質的に完全一致する。
 

二.流入してきた神話の話型

母系的・栽培文化
・オオゲツヒメ・ウケモチら
豊穣を司る神の神話
・太陽神の岩戸隠れの神話
・イザナギ・イザナミの国産み神話

【神の出現を水平的に表現する信仰形態】
祖先、祖霊、死者、異形の人間、仮面仮装
者と信仰の対象は具体的であるが定型的で
はないものが彼方から村を訪れてくる。

父権的・「ウジ」氏族的・支配者文化
・タカミムスビを主神格とする観念
・天孫降臨
・ヤタガラスや金鵄など鳥類の活躍する
 神武の建国神話

【神の出現を垂直的に表現する信仰形態】
神は天上にあり、山上・森・木梢を通し
人間界に降下してくる


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ヘーゲルの精神現象学

へーゲルの思想的関心の中心にあったのは常に
“神と人間の関係”と“宗教の過去と現在の姿への変容”であり、
豊かな歴史意識の中で『宗教』という概念の編纂について着目している。

ヘーゲルは宗教を「自然宗教」⇒「芸術宗教」⇒「啓示宗教」の3つに分類しており、
オリエンタルな世界からギリシャ・ローマを経てゲルマンの世界にいたるまでの
世界観の変容をうまくこのカテゴリに当てはめている。


■自然宗教
自然宗教とは、自然の中で暮らす民族が自然の中にある神を崇めるものであり、
ギリシャ世界以前の東洋世界に多く発生した。
ただの自然物が神となり宗教となるのではなく、その自然物がある地域に住む
同一の民族の共同生活において核心となるイメージと重なっていなければいけない。
例えば獰猛な一族であるなら、自らの気性の荒さや勇猛さを体現する狼や鷲を
宗教のモチーフ、崇拝の対象として設定し、これらを守護神と呼称している。
その民族の特色と崇拝の対象が照応でき、類似・同一とみてとれる部分が存在している。

しかし、人がより現代人としての「らしさ」を兼ね備えるようなり、
動物的段階を抜け出せば、人々の宗教に対する意識が推移していく。


■芸術宗教
 こうして植物や動物などが崇拝の対象になる時代が終わると、
人々は職人が作り出した造形作品という、技術を対象とした崇拝を行うようになる。
これが芸術宗教だ。例としてピラミッドやオベリスク等が上げられるが、
芸術宗教といえば古代ギリシャのものであるとヘーゲル自身は強く思っているため、
便宜的にギリシャの前の位置づけとしてエジプトの宗教は自然宗教と混同視されている。

芸術宗教でヘーゲルは主に、古代ギリシャの芸術と宗教の一貫性について着目している。
芸術と宗教は互に癒着し、芸術の中に宗教が・宗教の中に芸術が調和を持って存在していたので、
それを見つけ出すのは非常に難しい事だった。

また、こういった現実世界をひきずった芸術作品が溢れる社会では
超越的な神の存在を人々は必要とすることは少ない。
(非常に難解な考察のため、この章ではヘーゲルはやや歯切れの悪い文章となっている。)


またヘーゲルは芸術作品を三つに分類した。
1つ目は神託・賛歌・彫像・祝典などの「抽象的芸術作品」。
『供物の見返りとして神からの返礼と行為の証を受け取り、作業を通じて神との一体感を実感する』
『贈物による神への表敬が、そのまま、自分自身の富と装飾に満足感を抱くことに重なる』としている。

これに対し2つ目が「生きた芸術作品」とされる、オリンピア競技だ。
生身の体が美であり芸術であり、民族の神を最高度に表現していると述べているが、
神との関係を無理に表そうとしている感じがあり、ヘーゲル自身も訂正を加えている。

3つ目は叙事詩、喜劇、悲劇からなる「精神的芸術作品」である。
しかしこれも主役は肉体を持つ人間であって神々ではないため、
実質は宗教論というよりも芸術論・共同体論となっている。


さらにヘーゲルは古代ギリシャの美的世界の後に訪れたキリスト教の中に
美を越える宗教性を見出した。
ヘーゲルは青年時代からギリシャ文学に親しみや芸術的魅力や憧れを持っていたが、
そこから脱却し、ギリシャという共同体の崩壊からキリスト教の成立にかけての
歴史的な流れを弁証法的に見出した。


■啓示宗教
古代ギリシャの栄光が徐々に身を潜めたところにキリスト教が介入したとして
ヘーゲルはさまざまな点からキリスト教の独自性を褒め、これを広めようと推奨している。

ヘーゲルがキリスト教が独自的であるとする一つ目の理由は天地創造の理論について。
神が世界の構造を観念として作り上げ、観念としては説明不十分で
成り立たない部分がうまれたことにより人々は現実の存在への移行を余儀なくされる。
言い換えるならば、世界中の理性を理論として表した論理学的なものから、
自己を排除した純粋な論理が直接の存在として現れた自然哲学的なものへの移行、
それがヘーゲルの哲学論における論理学から自然哲学への移行と一致するのである。

二つ目は原罪の論理だ。
ヘーゲルは原罪神話を蛇の誘惑に負けた人間の弱さについて表す物語ではなく、
食料に恵まれ労働の必要性がない“楽園”を内部から突き崩そうとする
「人間が精神的な存在であるという事」を著したもの、つまり
人間が発達した物語であるとしている。

三つ目が最も重要である三位一体説である。
ヘーゲルはイエスを特別な人間として考えてはおらず、
「自己意識を持つ人間」の1人でしかない。
しかし、こういった人間としての形でこの世に神が現れることが重要であり、
あくまで特別な肉体ではなく普通の肉体をもつ普通の人間へ神が受肉することが重要なのだ。
神の本性と人間の本性は同じであり、
キリスト教はこのことを人類史上初めて啓示した宗教であるとヘーゲルは言う。

人間と神は精神的な統一を迎える事がこの理論で重要である。
あくまで普遍的な人間に神が宿る。
だからヘーゲルはイエスの死を「人は死ぬもの」として冷静に受け止めたし、
その後の復活のイメージも全く眼中にない。
一般のキリスト教信者にもイエスと同等の事が起こりえると考えることが大事であり、
自らのうちに神性が宿ることを自覚する、精神の発展がここに見られる。


宗教を「教祖や理念が違うだけで本質的なものは全て同じだ」と考えていたが、
こうして分類することで自然・芸術・啓示宗教のそれぞれに背景があり、
本質も異なるものである事がわかった。
また、体系別に部類しようとしたヘーゲルの成した功績は甚大である。
大学生のうちにこういった本を読む機会を持てたのはとても良かった。

南洋との比較

日向神話(ニニギ~ウガヤフキアエズまでの日向に住んだ三大の皇室の祖先)
イザナギ・イザナミ神話に海との関連が見て取られる。


【海幸彦と山幸彦】
 パラオ・スラウェシのミナハッサ・ケイ諸島
 ⇒主人公が釣りの最中に魚に取られた針の返還を厳しく要求され
  仕方なく海底に赴き首尾よく針を奪還し命令した物に仕返しをする話系

【コノハナノサクヤヒメとイワナガヒメ】
 スウェラシのポソ地方のアルフール族
 ⇒岩を捨て植物を取った事により人間の寿命に限りが生まれた

【コノハナノサクヤヒメの出産】
 ⇒インドネシア~インドシナ半島で産婦の近くで火を燃やす「産婦焼き」
  『日本書紀』第3の1書、火中出産の最期に臍の緒を竹刀で切る


■最近までの通説
 南九州地方の原住民:隼人 ⇒ インドネシア系の種族ではないか
 ⇒日向神話は全体的に隼人の伝承を取り入れたものと仮定

5つの複合文化

先史時代の日本列島には少なくとも5つの「種族文化複合」が渡来したと想定される。
岡正雄氏(民俗学者)

1:母系的・秘密結社的・芋栽培=狩猟民文化
 縄文中期はじめ頃日本に流入
 メラネシア原住民の文化と著しく一致
 (乳棒状石斧・棍棒用石環・石皿・土器形態と文様・土偶・土面・集団構造)
 男性秘密結社の祭り(ナマハゲ)・タロ芋の一種であるサトイモを祭事の折の食物にする

2:母系的・陸稲栽培=狩猟民文化
 縄文末期に日本に流入
 狩猟生活とともに山地丘陵の斜面の焼畑において陸稲を栽培した
 (太陽神アマテラスの崇拝・家族的・村落共同的シャーマニズム・司祭的女性支配者)

3:父系的・「ハラ」氏族的・畑作=狩猟民文化
 弥生初期に満州、朝鮮方面からツングース系統のある種族によって日本に流入
 粟や黍を焼畑で栽培しながらも狩猟も行った
 アルタイ語系の言語を最初に日本に持ち込んだのはこの種族
 (櫛目文土器・穀物の穂摘み用半月系石器)
 岡氏の見解
 日本語のウカラ、ヤカラ、ハラカラなど同属集団を意味する言葉ハラ=カラは
 ツングース諸語において外婚的父系同属集団を呼んだ語ハラ(Hala)に系統を引く。

4:男性的・年齢階梯制的・水稲栽培=漁撈民文化
 紀元前4.5世紀頃、揚子江の夏口地方よりも南の沿岸地域から
 呉・越両国滅亡に伴う民族移動の余波として日本に渡来したもの。
 弥生文化における南方的と言われる諸要素を日本列島にもたらした
 アウストロネシア系の種族文化。(水稲耕作・進んだ漁撈技術・板張り船)
 若者宿、娘宿、寝宿、産屋、月経小屋、喪屋など機能に応じて独立の小屋を
 建てる慣習も年齢階梯制(年齢や世代の区分で社会を階層づける社会組織)によるもの。

5:父権的・「ウジ」氏族的・支配者文化
 支配者王侯文化・国家的支配体制を持ち込んだ天皇氏族を中心とする部族の文化。
 (4)の文化と同系同質の種族が、西から来たアルタイ系騎馬遊牧民によって
 征服され国家に組織されることによって、満州南部に置いて成立したが
 1世紀前から南下し始め朝鮮半島南部に暫く留まり3~4世紀頃に日本列島に渡来。
 大家族・「ウジ」族・種族のタテの三段に構成される種族構造。
 「ウジ」父系的氏族、軍隊体制、王朝制、氏族長会議、奴隷制、氏族職階製、
 各種の職業集団、鍛冶職集団などを所有。
 氏族や種族を五つの部分に区画する「五組織」的な社会及び軍事の構造もこの文化。
 天神崇拝、父系的祖先崇拝、職業的シャーマニズムなどの宗教要素もこの文化。
 ユーラシア・ステップ地域の騎馬遊牧民の文化と本質的に完全一致する。



これらに部類される神話

母系的・陸稲栽培=狩猟民文化(先述2)
・オオゲツヒメ・ウケモチら豊穣を司る神の神話
・アマテラスの岩戸隠れの神話
・イザナギ・イザナミの国産み神話

父権的・「ウジ」氏族的・支配者文化(先述5)
・タカミムスビを主神格とする観念
・天孫降臨
・ヤタガラスや金鵄など鳥類の活躍する神武の建国神話



また、日本固有の信仰形態には二つの根底となる文化がある

★神の出現を垂直的に表現する信仰形態
神は天上にあり、山上・森・木梢を通し人間界に降下してくる
(父系的・「ハラ」氏族的・畑作=狩猟民文化(前述3)

★神の出現を水平的に表現する信仰形態
祖先、祖霊、死者、異形の人間、仮面仮装者と
信仰の対象は具体的であるが定型的ではないものが彼方から村を訪れてくる。
(母系的・秘密結社的・芋栽培=狩猟民文化(先述1)

地域的文化の流入

いつどのような文化によって運ばれ
いかなる経路でわが国にまで伝播したのか?


■ジョルジュ・デジュメル
フランスの言語学者・神話学者
印欧語族の古神話に共通する構造を明らかにした。


1960~現代までの研究
日本神話が印欧語族の古神話と細部まで一致した構造を持っている事が判明。
(ギリシア・ゲルマン・ケルト)

ユーラシアのステップ地帯のイラン系騎馬遊牧民 →
アルタイ系遊牧民 → 朝鮮半島 → 日本 と伝播


【日本神話の構成】
 起源が異なる要素が混ざり合い複合的に構成されている。
 ・印欧文化
 ・中国の揚子江以南からインドシナ・アッサムにかけての東南アジア地域
 (水田による稲作・焼畑による雑穀栽培。二種の農耕文化)


日本の文化形成は地形が重要な鍵

【北】千島、樺太、沿海州
 狩猟―北方ユーラシアの森林地帯と接続
 ⇒縄文文化(原始的狩猟・漁撈文化)

【西】本州、九州
 騎馬―旧満州、蒙古、カザフスタン、南ロシアにまたがるユーラシア・ステップ地帯
 ⇒古墳文化(馬匹飼育遊牧民文化)

【西南】朝鮮半島南部
 農耕―中国中南部、インドシナ、インド、東南アジアモンスーン地帯
 ⇒弥生文化(稲作文化)

【南】九州南端
 漁撈―台湾、フィリピン、インドネシア諸島からなるオセアニア地域
 ⇒縄文文化(漁撈文化)

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