一.太陽神話研究の歴史
《二十世紀前半》
天体神話学派が生まれた頃から研究対象として着目されはじめる。
パウル・エーレンライヒ・ヴィンクラー
「神話は天体運行をモデル化したもので、太陽神話を中核に置く」
《十九世紀後半~二〇世紀前半》
歴史民俗学派が新たな特徴を提唱
フロベニウス・シュミットら
「太陽・月神話は特定の諸文化において特徴的に発展している」
二.太陽神の役割の変遷
●原始の太陽神
鷹・甲蟲・牛・馬等の動物・有翼の円盤のような象徴的な形
→ 守り神・その種族の特性を象徴する神
↓
●次第に擬人化が進む
太陽を宮殿とする人・太陽を乗り物とする人
→ 天上の神々の支配者・地上の生物の育成者として祈願の対象となる
↓
●太陽神が創造神・宇宙の主を兼ね、絶対的神威が称えられるようになる
M.エリアーデ
「太陽神の崇拝はもともと天上の至上神からの転化であり、その多くが
統治権との結びつきが顕著である。」
→ エジプト・バビロン・インド・インカでは王は「日御子」と称される・
→ ポリネシア諸島(ソシエテ・ハーヴェイ・サモア・ニュージーランド)
台湾・琉球・朝鮮の東南~東亜諸民族にも同様の傾向が見られる。
三.太陽崇拝を持つ地域
J.G.フレーザー
「太陽崇拝は高度な文明を持つ地域の民族にのみ見られる」
しかし必ずしも太陽神話の有無はこのソートに当てはまるわけではない。
・アメリカ平原地方クロウ族 … 太陽神を最高神とする
・アメリカ東南部族ユチ族 … 太陽神を最高神とする
・太平原諸族ブラックフット … 夏至の太陽踊り等の祭祀儀式
・太平原諸族テトン・シウ族 … 夏至の太陽踊り等の祭祀儀式
四.神格と霊格の差異
太陽神話と太陽崇拝は必ずしもイコールではない
太陽を崇拝していない場合
・ 太陽射落とし神話 … 東南アジア・中国
・ 太陽盗み神話 ……… 東南アジア・アイヌ・北アメリカ・インディアン
→ 太陽に霊格が存在しているだけであり、崇拝されていない
(光る生き物・光熱のある物と認識)
太陽を崇拝している場合
・ 光熱を大地の豊穣の源泉とみる
・ 神徳性恩恵を祈願・祭祀
→ 太陽に神格が存在している → 宗教的慣行の発生
■参考文献
古代日本人の信仰と祭祀『日本古代の太陽信仰と大和国家』松前健
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